「これからショールーム制作のプロジェクトを立ち上げるが流れがわからない」
「実際にどのように依頼すればよいのかわからない」
ショールームプロジェクトの立ち上げや推進にあたって、上記のように悩んでいる企業担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ショールーム制作には基本的な流れがあり、あらかじめ理解しておくことで外注先へのオリエンや、プロジェクトスタート後の各工程をスムーズに進めやすくなります。
今回の記事では、ショールーム制作の基本的な流れについて詳しく解説します。また、ショールーム制作を外部パートナー会社に依頼するにあたって、必要な提案依頼書(RFP:Request For Proposal)についても併せて解説しています。
これからショールーム制作を進めるにあたって全体像を理解しておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
Index
■ショールーム制作の基本的な流れ
ショールーム制作の基本的な流れとしては、以下が一般的です。
- 構想段階
- 企画・設計期間
- 工事期間
- 開業準備
それぞれの流れについて、詳しく見ていきましょう。
1. 構想段階
構想段階は、ショールーム制作プロジェクトの動き出しに当たる部分です。構想段階で全体の方向性が決まるので、慎重に進めることが重要です。
具体的には、ショールームの要件定義や予算策定、外部パートナーへの発注などが主なタスクとして挙げられます。構想段階でしっかりとイメージを固めておくことで、後の工程における後戻りを防げるので、細かい部分まで十分に話し合って方向性を決めましょう。
なお、後述するRFPは、このプロジェクト構想をまとめたものが骨子となっていきます。
2. 企画・設計段階
企画・設計期間は、構想段階で決めた骨子を基にショールームの具体的なコンテンツ・展示手法について、コストバランスを見ながら検討するフェーズです。また、工事実施に向けて、具体的な設計と各工事会社との調整を始めます。
3. 工事期間
工事期間は外部パートナーと合意したデザイン・設計書に従って、内装工事や展示のコンテンツ制作を進める段階です。工事内容や条件によって変わりますが、約300㎡程度のショールームをゼロから設置、改装する場合であれば、おおよそ2~3ヶ月かかるのが一般的とされています。
※工事区分:工事内容や工事箇所によって分けられており「誰が工事をするのか」「誰がその工事費を負担するのか」によって、一般的に「A工事」「B工事」「C工事」に分かれる。建物によって区分は異なり、「工事区分表」「賃貸借契約書」などの資料に明記されている。
4. 開業準備
開業準備の段階では、ショールームへ製品設置を行い、機材やコンテンツの試験運用、全体の運用シミュレーションを行います。「ネットワーク環境は正常に稼働しているか」「デジタルサイネージなどの機材に問題はないか」といった稼働確認のほか、マーケティング部門や営業部門など施設利用を想定される関係者に対してお客様のアテンド方法を共有し、運用面のチェックを入念に行いましょう。
■ショールーム制作に必須のRFPとは?
RFPとは「Request for Proposal」の略で、日本語では「提案依頼書」を指します。企業が開発や業務委託を行う際に、発注先に具体的な提案を依頼するために必須な資料です。
RFPを作成することで自社の要件や課題を明確にできるため、構想段階から積極的に活用することをおすすめします。具体的なRFPを用意できれば、社内はもちろん社外とのコミュニケーションがより取りやすくなり、依頼先の提案の精度も大きく向上します。
■RFPの項目別紹介
RFPの項目として、以下のような項目が一般的です。
- プロジェクト概要
- 依頼業務
- 工事場所
- スケジュール
- 予算
- 施設図面
- 提案について
- 企画案
それぞれの項目について、詳しく解説します。
1. プロジェクト概要
まず初めに、施設名称、施設を建てる目的、ターゲットなど、プロジェクトの概要を記載します。特に、このプロジェクトの目的を明確に示しておくことが重要です。
施設名称 | <例> 〇〇コミュニケーションデザインセンター(仮) |
目的 | <例> ・株式会社〇〇では創立70周年に際し、イベント用のショールームを設立する。 ・関連企業、政府機関、メディアなどを対象とし、 企業イメージの展示や製品・ソリューションの体験を目的とした施設を設置する。 ・株式会社○○が保有する技術力をアピールし、 共創パートナーや新規顧客の開拓を目指す。 ・訪れたステークホルダーに自社の商品の魅力を感じてもらい、 新たな商談につなげる。 |
対象 | <例> ・お客様、取引先企業 ・自治体、研究機関 |
2. 依頼業務
依頼業務の欄には、発注先に依頼する業務内容を分かりやすくまとめます。箇条書きで要点を分かりやすくまとめておくと、やり取りがスムーズになります。
外部のパートナーが混乱しないように、不要な情報は取り除き、要点だけ伝えましょう。提案内容や見積内容に関わる重要な部分ですので、抜け漏れのないよう、プロジェクトチーム内でしっかりとすり合わせをしておきましょう。
<例>
・施設の設計、デザイン
・施設体験のコンテンツ制作
・工程作成、管理、関係者調整
・製作、施工、設置
3. 工事場所
工事場所の部分では、工事を行う場所と工事範囲について記載します。正確に伝えるために、所在地は住所で具体的に記載しましょう。
所在地 | <例> 〇〇 コミュニケーションデザインセンター 〒△△△-△△△△ 東京都江東区辰巳▢-▢–▢▢ |
工事範囲 | <例> スタジオ内空きスペース 1階 約 100 ㎡ 2階 約 200 ㎡ 3階 約 100㎡ |
4. スケジュール
スケジュールの欄には、オープン予定日、希望納期、その理由記載しましょう。オープン日時については、想定しているショールームの規模や、工事条件に応じて、でどのくらいの期間が必要になるのかを専門のパートナー会社に事前に相談しておくことが、確実なプロジェクト進行のためには望ましいです。
オープン予定日 | <例> 2025年4月上旬 理由:2025年5月に迎える創業○○周年イベントをショールームで開催する為 |
希望納期 | <例> 2025年2月末 |
5. 予算
予算の欄には、ショールームプロジェクト全体で想定している予算を記載しましょう。構想段階で専門のパートナー会社に概算算出の協力を仰ぎながら、工事やコンテンツ制作にどの程度の金額がかかるのかを算出できると、より適切なプロジェクト進行につながります。
予算を正確に伝えるために、税込、税別表記まで記載しましょう。
<例>
・総費用は3,700万円(税別)以上を予定(コンテンツ制作費用を含む)
※提案内容に応じて若干の予算増減が可能
6. 施設図面
適切な提案と見積の提案を受けるために、施設情報が記載してある図面の準備が必要です。
建物完成時に設計会社、もしくはゼネコン会社から渡される「竣工図書」におおよその情報があるはずですが、特にショールームプロジェクトの場合の多くは、設置該当箇所の「仕上げ表」「平面図」「立面図」「展開図」「断面図」「天伏図」で構成される意匠関連図面と、「電気設備図」「空調設備図」などで構成される設備関連図面が最低限必要な資料になります。別途記載する場合は「別途記載」とそのファイル名などを書いておくと相手にとって親切です。
外部の画像添付サービスを利用する際は、画像リンクのURLを記載しておくと良いでしょう。
7. 提案について
提案依頼に関して、提案期日、提出物、担当者連絡先を記載しましょう。特に外部パートナーの担当者との連絡を密に取りたい場合は、すぐにつながる連絡先を記載しておくのがおすすめです。
また、緊急時のために電話番号、メールアドレス、チャットIDなど可能な限り、複数の連絡先を記載しておきましょう。
提案期日 | <例> 2024年1月31日 |
提出物 | <例> ①提案書 ・施設の企画案 ・イメージパース ・レイアウト図面 ・設計図面 ・工程表 ・体制表 ②見積書 ・概算工事費用見積(フロア別) |
担当者連絡先 | 株式会社〇〇 マーケティング部 田中太郎 XXXX.XXXX@yyy.co.jp |
8. 企画案
社内である程度の構想が固まっている場合は、施設コンセプト、訴求内容・メッセージ、施設機能、展示物などの企画案も記載しておきましょう。言葉だけでイメージを伝えづらい場合は参考となるサイト、画像リンクなどを添付すると、社内外の関係者にとって親切です。
コンセプトや訴求内容などは、具体的にショールームに訪れた方にどんな「態度変容」を起こしてもらいたいのかを明確にするとよいでしょう。
施設コンセプト | <例> 人と社会のコミュニケーションについて考え、次の体験を生み出す場 |
訴求内容・メッセージ | <例> ・株式会社〇〇は体験デザイン、コミュニケーションデザインに特化した クリエイティブカンパニーであると認識していただく。 ・株式会社〇〇との共創を通して、 自社の提供価値を高められる可能性を感じていただく。 ・株式会社〇〇にご依頼いただくことで、 イメージできる未来を想像していただく。 |
施設機能 | ・展示スペース(自社商品の紹介を行うディスプレイを設置) ・体験スペース(サービスの体験ができるデモルームを設置) ・会議室(20名で会議もしくはセミナーが開催出来る仕様) |
展示物 | <例> ・社史(映像コンテンツ) ・過去の制作物(過去に制作したパネル、歴代の商品パッケージを展示) |
■まとめ
ショールーム制作プロジェクトは一般的に、「1.構想段階」「2.企画・設計期間」「3.工事期間」「4.開業準備」という4つのフェーズに分かれます。それぞれの工程をあらかじめ理解しておくことで、初めてのショールーム制作でもトラブルなくスムーズに進行しやすくなります。特に、プロジェクト成功に大きく影響する「構想段階」では、パートナー会社に依頼するためのRFPをまとめながら、ショールームプロジェクトに必要な社内外の体制構築と、プロジェクトの方針を固めていきましょう。
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