マーケティング戦略とは、顧客・市場と自社との関係を分析し、提供価値の方向性を定めるための取り組みのことです。競合他社との差別化や顧客ニーズに合致した商品開発、または販促に欠かせないもので、多くの企業がマーケティング戦略の策定に取り組んでいます。今回は、マーケティング戦略の概要の他、策定方法についてご紹介します。
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■マーケティング戦略とは?なぜ重要?
まずは、マーケティング戦略の概要や役割についておさらいしておきましょう。
●マーケティング戦略とは何のこと?
マーケティング戦略は、企業が市場において競争力を維持し、顧客のニーズを満たすための取り組み全般を指す言葉です。ターゲットとなる顧客を定め、その顧客のニーズに対して製品やサービスをどのように提供するかを考えます。また、そのプロセスを管理・実行するための方法を考えるのもマーケティング戦略の重要な要素です。具体的には、以下の3要素を軸に戦略を組み立てていきます。
ターゲット市場の特定
どの顧客層に対して製品・サービスを提供するかを決定する差別化戦略
競合他社との差別化を図るために、自社の強みや特性をどのように活かすかを考えるマーケティングミックス(4P)
製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素をどのように組み合わせて市場に提供するかの計画を立てる
●マーケティング戦略が重要視される背景
このようなマーケティング戦略が重要視される背景には、消費者ニーズや市場環境の急激な変化があります。具体的には、以下の3つの要因によって、高度なマーケティング戦略が求められるようになってきたと考えれます。
市場の複雑化
グローバル化はデジタル化により、顧客の行動や嗜好が多様化しているため、適切なターゲットを見極めることが難しくなっている消費者の期待が高まり
消費者は、高品質な製品・サービスや、パーソナライズされた体験を期待している競争の激化
競争が激化し、どの企業の商品・サービスも一定のクオリティを持つようになった現代。品質だけでは、十分な付加価値を維持できない状態が続いている(コモディティ化)。消費者自身も、どの商品・サービスを選ぶべきかの判断が難しい時代だからこそ、+αの【このブランドを買う意味】が求められている
●マーケティング戦略によって得られる効果は?
上述したような市場の変化によって、マーケティング戦略は企業活動に欠かせない取り組みとなりました。では、マーケティング戦略を策定することによって、どのような効果が得られるのでしょうか?代表的な効果としては以下の3つがあります。
ターゲット顧客のニーズに合った戦略が建てられる
マーケティング戦略によって、ターゲット顧客の具体的なニーズや嗜好に基づいたアプローチが可能になります。これにより、顧客との関係を深め、より顧客が求める製品やサービスを提供できるようになります。
売上を効率的に向上させられる
顧客のニーズに合った製品やサービスを提供することで、無駄なプロモーションやコストを削減し、売上を効率的に向上させる効果が期待できます。また、ニーズやタイミングに合わせた施策の実行には、ブランドに対応する顧客の好意を高める効果もあります。
自社リソースを効率的に活用できる
企業が持つ限られたリソース(資金、人材、時間など)をどのように使うかが重要です。マーケティング戦略を立てることで、リソースを最も効果的な方法で活用し、無駄を減らしながら目標を達成することができます。
■マーケティング戦略の策定方法は?
では、マーケティング戦略を策定するには、どうすればよいのでしょうか?市場や顧客によって方法はさまざまですが、ここでは基本的な策定方法について簡単にご紹介します。
1.マーケティングリサーチ
マーケティングリサーチは、市場や顧客のニーズ、競合状況を理解するためのデータ収集活動です。
代表的なリサーチ方法としては、「定性調査:インタビューなどで顧客の感情や深層のニーズを探る」「定量調査:アンケートと統計分析などの手法で、市場全体のトレンドや顧客の行動パターンを把握する」「競合調査:競合他社の動向や提供している価値を分析し、自社の競争優位性を明確化する」などがあります。
このようなマーケティングリサーチを基に、戦略の基礎を固めていきます。2.内部・外部分析
マーケティングリサーチで得たデータを基に、内部環境と外部環境を分析します。このステップを通して、自社の強みと弱み、そして市場の脅威や競合との違いなどを評価します。
このステップでは、SWOT分析、PEST分析、競合分析などの手法を活用して、自社と競合他社の強みや弱み、自社に影響を与える外的要因などを明らかにして、現状の競争力や競争力を高めるための自社リソース、アプローチすべき顧客層などを把握します。
3.セグメンテーションとターゲティング
内部・外部環境を把握できたら、アプローチすべき顧客をセグメンテーションという手法でさらに細分化していきます。顧客を共通の属性(年齢、性別、収入、ライフスタイルなど)で分類し、異なるセグメントごとに適したアプローチを検討します。
さらに、セグメンテーションによって分けられたグループの中で、最も利益を見込める顧客層をターゲティングという手法で選定します。この時、ターゲット層のニーズや行動パターンを理解することが重要です。
4.提供価値(バリュープロポジション)の設定
ターゲットを選定したら、次に自社の製品やサービスが顧客に対してどのような価値を提供できるかを定義します・提供価値の設定やバリュープロポジションと呼ばれる手法です。
バリュープロポジションとは、自社の製品がなぜ他の製品よりも優れているのかを明確にするメッセージであり、ターゲット顧客に対して提供する独自の価値のことです。この手法で、価格面での優位性、品質の高さ、利便性、アフターサービスなど、顧客に提供できる具体的なベネフィットを明確にします。
5.実行戦略の策定
提供価値(バリュープロポジション)を設定したら、それを基に市場や顧客に届けるための具体的な戦略を決定します。実行戦略を策定する方法にはさまざまな種類がありますが、マーケティングミックス(4P)などの手法が有名です。
実行戦略の策定方法については、以下の項目で詳しくご紹介します。実行戦略をしっかりと構築することで、ターゲット顧客に効果的にリーチし、製品やサービスを認知してもらうことができます。
6.実行・分析
策定したマーケティング戦略を市場で実施し、販売活動を開始します。プロモーションや販促活動の進行状況を管理し、計画通りに進んでいるかを確認。実行後は、売上データや顧客の反応、Webサイトのアクセス状況などを収集し、KPI(重要業績評価指標)と照らし合わせて成果を分析します。分析結果が出たら、戦略を修正したり改善したりして、次のアクションにつなげます。顧客の反応や市場の変化に応じて、柔軟にアクションを調整することが成功の鍵となります。
このようなステップを繰り返し、マーケティング戦略の改善と実行を続けることが大切です。そのプロセスでは、さまざまな手法やフレームワークを用いて、戦略をブラッシュアップすることが求められます。
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■マーケティング戦略の策定に役立つフレームワーク13選
ここでは、マーケティング戦略の策定に役立つフレームワーク13選を簡単にご紹介します。どのような手法があるのかわからないという方はぜひ参考にしてみてください。
①3C分析
Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の3つの要素を分析して、自社の競合優位性を見極めるフレームワークです。3C分析を行うことで、自社が所属している市場における自社のポジションを明確にすることができます。
②4C分析
Customer(顧客)、Cost(コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの要素を分析し、顧客視点で客観的に製品やサービスを評価するフレームワークです。4P分析を顧客視点に置き換えたものと捉えることもできます。
③4P分析
Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つの要素を分析し、市場や顧客ニーズに応じた商品やサービスを提供するためのフレームワークです。企業視点でマーケティング戦略を策定するために使われます。
④ STP分析
Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット設定)、Positioning(ポジショニング)の3つの要素を分析し、ターゲット市場を明確にするフレームワークです。まだ開拓されていない領域を見つけ、競合と差別化できるポジションを確立するために活用できます。
⑤PEST分析
Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの外部要因を分析して、ビジネスに影響を与える外部環境を評価するフレームワークです。自社を取り巻く外部環境が、事業に対して将来的にどのような影響を与えるかを予測・把握するために活用されます。
⑥SWOT分析
Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの要素を分析し、自社の内部・外部環境を把握するのに活用できます。内部・外部環境のプラス面とマイナス面を洗い出すことができ、戦略の方向性を決定するのに役立ちます。
⑦AIDMA分析
Attention(注意)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)という、消費者が商品やサービス見つけてから購入するまでのプロセスをモデル化したフレームワークです。消費者心理の段階に合わせたアプローチを考えるのに役立ちます。特に広告や販促の施策を考える際に用いられます。
⑧PPM分析
PPM分析とは、プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略で、事業や製品を「市場成長率」と「市場シェア」で分類し、リソース配分を最適化するのに役立つフレームワークです。自社の事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」に分類して、既存の事業や商品を分析するのに用いられます。
⑨VRIO分析
Value(価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織化)の4つの要素から、自社の経営資源が持つ競合優位性を評価するフレームワークです。
⑩バリューチェーン分析
企業の活動を主活動(製造、販売、サービス)と支援活動(人事、調達など)に分け、それぞれの活動がどのような価値を生み出しているのかを分析するフレームワークです。事業の工程の問題点を洗い出し、改善するのに用いられます。
⑪ファイブフォース分析
競合の脅威、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力の5つの競争要因を分析し、業界の競争環境を評価するフレームワークです。ファイブフォース分析を用いることで、競合各社や業界全体の状況と収益構造を明確にすることができ、その中での自社の価値や利益の上げやすさを評価するのに役立ちます。
⑫コホート分析
特定の時期に同じ行動をとった顧客グループ(コホート)を追跡し、時間の経過による行動の変化を分析するフレームワークです。顧客のライフサイクルや行動パターンを理解するのに役立ちます。また、Webサイトやアプリケーション、商品やサービスの継続率を改善するための手法としても活用されています。
⑬ロジックツリー
ロジックツリーとは、さまざまな問題を分解し、構造化するのに役立つフレームワークです。ロジックツリーを使うことで、特定の事柄の上流から下流までのあらゆる工程の全体像を可視化することができ、どのプロセスで問題が発生しているのか?どのプロセスを改善すれば全体のパフォーマンスを高められるのか?といった要点を見つけることができます。
■マーケティング戦略を策定する際に押さえておきたいポイント
マーケティング戦略を策定する際には、以下のようなポイントを押さえておくことが大切です。これらのポイントを意識して、戦略策定をはじめましょう。
●ターゲットに合わせた施策を立案・実行する
マーケティング戦略を策定する上で常に覚えておきたいのは、ターゲット顧客のニーズに応えるということです。セグメンテーションとターゲティングを通じて明確にした顧客層に対して、そのニーズや行動に適した施策を立て、全プロセスでその要素が失われていないかをチェックします。
●データ収集・活用を重要視する
現代のマーケティングにおいて、データは非常に貴重な資産です。マーケティングリサーチ、キャンペーン、Web解析などを通じて、そこから得たデータを基に意思決定を行いましょう。このようなデータを活用したアプローチによって、無駄なコストを削減し、より効果的なマーケティング戦略を考えられるようになります。
●顧客との接点だけでなく、関係の構築に注力する
顧客へのアプローチで意識したいのは、接点を作るだけでなく、関係を構築するということです。顧客との信頼関係を築き、繰り返し利用されるようなブランド体験を提供することで、商品やサービスの価値をさらに高めることができます。アフターサービスやカスタマーサポートの質を向上させたり、パーソナライズされたコンテンツを提供したり、顧客との関係を作るための施策を意識しましょう。
●一連の顧客体験として捉える
マーケティング施策は、顧客にとってのブランド体験の一部であることを認識し、すべてのフェーズで「ブランドコミュニケーションとして最適か」を意識しましょう。ターゲットに合わせて立案した施策であっても、ブランド価値を感じられなければ顧客一人一人の愛着は得られません。ブランドの「らしさ」を体現する施策のアウトプットを目指しましょう。
●状況に合わせて、専門家や外部パートナーへの相談を検討する
外部の専門家に協力してもらうことで、施策のアウトプットの質を高められることがあります。専門的な視点から戦略を評価してもらったり、抱えている課題に合わせた施策を提案してもらったり、適切なタイミングで外部委託をすることで、内部だけでは出せなかったアウトプットを生み出すことができます。状況に応じて、専門家や外部パートナーへの相談を検討してみてください。
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■ターゲットに合わせた施策事例3選
博展は、BtoC、BtoBに関わらず、さまざまな企業のマーケティング支援を行っています。ここでは、「戦略に基づいた施策の実行」に強みを持つ、博展のマーケティング支援事例の一部をご紹介します。
●事例①: 株式会社マネーフォワード|HR EXPO 秋 2022
博展は、2019年から、年間を通じて株式会社マネーフォワードの展示会におけるイベントマーケティングをトータルでサポート。目的に合わせて展示会を改善し続けたことで、獲得した名刺の数がKPIを大幅に上回りました。
●事例②:株式会社SmartHR|第10回 HR EXPO【春】
SmartHRの成長に合わせ、展示会コミュニケーションをアップデート
株式会社SmartHRは、2022年5月に東京ビッグサイトで開催されたHR EXPOに出展。博展は、ブランドイメージやサービスを整理し、株式会社SmartHRの要望に応じて、展示会ブースをアップデート。ブースにおけるコミュニケーション設計からデザイン、施工までを担当しました。
●事例③:ホシザキ株式会社|国際ホテル・レストラン・ショー / FOOMA JAPAN
ホシザキ株式会社は、2021年に開催されたフードサービスの商談専門展 国際ホテル・レストラン・ショー、日本最大の食品製造総合展 FOOMA JAPANに出展。博展は、コロナ禍で状況が大きく変わった展示会において、出展におけるコンセプト戦略からブースデザイン、施工までをトータルでサポートしました。
■まとめ
今回は、企業活動に欠かせないマーケティング戦略についてご紹介しました。複雑化し、顧客の期待値が高まり続ける市場において、長く選ばれ続ける商品・サービスを生み出すには、綿密なマーケティング戦略の策定が必要です。ただ、注意したいのは、戦略を優先して施策を怠らないようにすること。
戦略策定ももちろん重要ですが、何よりも大切なのは、顧客に実際にアプローチするための施策を考えることです。戦略策定を机上の空論で終わらせず、その効果を高めるためにも、マーケティング戦略に基づいた施策の実行を意識しましょう。
HAKUTENは、人と社会のコミュニケーションを「体験」によってつなぎ、お客様のビジネスを次へ動かすクリエイティブカンパニーです。
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