近年増えつつある「企業ミュージアム」の定義や役割、また、ショールームとの違いについて解説します。東京都内や横浜みなとみらいエリアの企業博物館の事例もご紹介!
さらに、企業ミュージアムを起案する際のポイントについても触れていきます。
Index
・企業ミュージアムとは?
・企業ミュージアムの役割とメリット
・ショールームとの違いは?
・企業ミュージアムの事例を紹介!
・企業ミュージアムを起案するときのポイント
・まとめ
企業ミュージアムとは?
企業ミュージアムとは、一般の方向けに開放されている企業の施設のことです。
会社の歴史や製品・サービスを見学、体験できる施設がほとんどで、企業博物館と呼ぶこともあります。
■企業ミュージアムの役割
企業ミュージアム(企業博物館)は、顧客への営業活動やコミュニケーションツールとして活用されるほか、一般の生活者に向けた認知獲得といったブランディングの機能をもちます。
また、企業の活動、製品・サービスの理解度を高めてもらうための、生活者との重要な接点になり得ます。
一般の生活者へ開放することで、社会的な取り組みや企業姿勢を直接伝えることができ、潜在的な顧客へのアプローチにもつながります。
他にも、企業ミュージアム(企業博物館)は、新入社員の研修や採用に利用されたり、社会科見学などの課外活動として学校単位で利用されたりと、学習の場としても活用されることがあります。
■ショールームとの違いは?
ショールーム
企業ミュージアムに比べてショールームは製品展示が中心となっており、顧客の購買意欲を高めることが目的の場合がほとんどです。
また、オフィスに併設されていることも多く、基本的に一般向けには開放されていません。そのため限られた取引先への集中的なアプローチとして活用できます。
ショールームは、実際に手で触れながら製品の機能や効果を確かめる、タッチポイントとして活用するのに最適と言えます。
企業ミュージアム
一方で企業ミュージアムは、企業の姿勢や歴史を紹介しながら、ブランドの理解を促進することが目的です。
製品へのこだわり、製造プロセス、デザインの考え方など、製品単体の展示だけでは伝わらないバックボーンや企業の想いを共有・体感する場として、企業ミュージアムをつくる場合がほとんどです。また、企業ミュージアムは工場に併設されていることが多く、ツアーが開催されていることもしばしば。
製造の様子を見ながら、製品ブランドの背景をダイレクトに感じることで理解度を高め、企業と生活者との距離を縮めることが可能になるのです。
企業ミュージアム | ショールーム | |
---|---|---|
例 | カップヌードルミュージアム マツダミュージアム | 住宅建材系ショールーム |
役割 | 企業ブランディング、認知拡大 | 商談のクロージング |
対象 | 一般の生活者 ファミリー、カップル、観光客など (一部BtoB顧客) | 製品に触れてスペックを確かめる 購入候補を絞り込む 情報収集 |
来場目的 | レジャー 観光 社会科見学 | 製品に触れてスペックを確かめる 購入候補を絞り込む 情報収集 |
展示手法 | 製品情報だけではなく、歴史や技術を 楽しく学べるコンテンツが多い | 製品の使用イメージを想起させる展示 製品の特徴にフォーカスした展示 |
企業ミュージアムの事例を紹介!
ここからは企業ミュージアムの国内と海外の事例をエリア別に紹介していきます。
■東京都内エリアの企業ミュージアム
①Panasonic / AkeruE
まずひとつ目に紹介するのは、パナソニック株式会社が運営する「AkeruE」。東京・有明のパナソニックセンター東京2・3階にある国内初のクリエイティブミュージアムです。
AkeruEのコンセプトは、「ひらめきをカタチにするミュージアム」。
作品を観る、つくる、そして伝える(発信・共有)する様々な体験を通して、子どもたちの「ひらめき力(ギリシャ語でEureka)」を育む施設です。無料ゾーンと有料ゾーンがあり、広く充実した施設となっています。
「AkeruE」の体験レポート
施設概要
名称:AkeruE(アケルエ)
住所:〒135-0063 東京都江東区有明3丁目5番1号
アクセス:りんかい線「国際展示場駅」徒歩2分 / 新交通ゆりかもめ「有明駅」徒歩3分(google map)
代表電話:03-3599-2600(受付:火~日 10:00~18:00)
②コクヨ / THE CAMPUS(ザ・キャンパス)
続いて、東京・品川エリアに位置するコクヨ株式会社が手掛ける「THE CAMPUS」は、コクヨ株式会社が運営する「働く・学ぶ・暮らす」の実験場です。
品川駅港南口から徒歩3分の自社ビルを2021年2月に改装し、新たに設立されたこの施設には、誰でも利用できるパブリックエリアも併設されています。
“みんなのワーク&ライフ解放区”をコンセプトに、ライブオフィスやショールーム、新規事業開発の場としてのラボのみならず、一般利用も可能なラウンジや公園、ショップ、コーヒースタンドなど、緑あふれる空間で自由に過ごせます。
「THE CAMPUS」の体験レポート
施設概要
名称:THE CAMPUS(ザ・キャンパス)
所在地:東京都港区港南1丁目8番35号 (google map)
営業時間:8:30〜19:30 ※THE CAMPUS SHOP:10:00〜19:30
※コクヨ東京ショールーム:10:00〜16:00
(現在は感染症対策のため、完全アテンド制で個人のお客様の見学予約は受け付けておりません)
定休日:土日祝日、年末年始、夏季休業日
URL:https://the-campus.net/
③三菱電機グループ/METoA Ginza
銀座の中心、東急プラザにある三菱電機グループが運営する体験型の施設「METoA Ginza(メトアギンザ)」。METoA Ginzaは、三菱電機グループの製品やテクノロジー、さまざまな企業活動を、新しいカタチの映像や展示を通して、無料で体験できる施設です。
2016年の3月にオープンして以来、定期的に様々なテーマでイベントが開催されています。今回は、その中でも当社・HAKUTENが担当したイベント、「ミライフドーム」をご紹介します。
「ミライフドーム」は、2021年12月3日(金)〜 2022年3月8日(火)の期間限定で開催されたイベントで、三菱電機グループで働く人を含む、みんなが思い描く”もしも?”の未来を多様なコンテンツを通して体験するイベントでした。
ただ「三菱電機グループが考える未来」を紹介するのではなく、体験を通して生活者と共に考え、未来の世界を作り上げていくというMEToA Ginzaならではのコミュニケーションがありました。
「ミライフドーム」の体験レポート
また、METoA Ginza「ミライフドーム」を担当したプロジェクトチームの対談インタビュー記事も公開しております!
どのように空間デザイン・体験設計をおこなったのか、イベント当日までの背景を赤裸々に語っていますのでぜひご覧ください。
「ミライフドーム みんなの“もしも?”で広がるミライ」のプロジェクトストーリー
施設概要
名称:METoA Ginza
開催場所:〒104-0061 東京都中央区銀座5-2-1「東急プラザ銀座」内 (google map)
開館時間
イベントスペース: 11:00 – 19:00 / 入場無料
METoA Cafe & Kitchen: (月~金)11:00 – 23:00/ L.O 22:00
(土・日) 8:30 – 23:00/ L.O 22:00
公式サイト:https://metoa.jp
■横浜みなとみらいエリアの企業ミュージアム
④村田製作所/Mulabo!(ムラーボ!)
横浜みなとみらいにある、株式会社村田製作所が運営する子供向け科学体験施設「Mulabo!(ムラーボ!)」。この施設は同社の事業活動と紐づいた「科学」を通して「発見して考える」施設としてつくられた企業ミュージアムです。
踏むと音が鳴るエンジョイステップやタッチパネルを触って電気の基本を学べるアナトミーテーブルなど、音や映像だけでなく五感を使う展示コーナーが多いのが「Mulabo!」の特徴。ゲームなど参加できる体験型コンテンツで、子どもたちも楽しみながら自然と科学に触れられ、体感として記憶に残る工夫が施されています。
「Mulabo!」の体験レポート
施設概要
名称:Mulabo!(ムラーボ!)
所在地:〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい4丁目3-8 (google map)
営業時間:10:00 ~ 17:00(カフェのL.O. 16:30)
入館料 :無料(サイエンス体験展示の参加にはご予約が必要です。)
休館日 :日曜、月曜、その他村田製作所の休業日
URL:https://mulabo.murata.com/
⑤資生堂/「S/PARK エスパーク」
続いて紹介するのは、横浜みなとみらいに2019年4月にオープンした、資生堂グローバルイノベーションセンター「S/PARK (エスパーク)」内にあるビューティーとサイエンスをテーマにした美の体験型ミュージアム「S/PARK Museum」。
「S/PARK Museum」は、「SCIENCE × ART」「LIFE OF BEAUTY」「INNOVATIONS IN BEAUTY 」「FUTURE」の4つのゾーンで構成分けがなされており、五感を使って化粧品の不思議を実体験できます。
「S/PARK エスパーク」の体験レポート
施設概要
名称:S/PARK Museum(エスパーク ミュージアム)
所在地:〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島一丁目2番11号 (google map)
営業時間:11:00~18:00 (定休日:日曜)
入場料:無料
アクセス:みなとみらい線「新高島」駅 1・2番出口すぐ
JR/市営地下鉄「横浜」駅 東口から徒歩10分
URL:https://spark.shiseido.co.jp/museum/
⑥LG / YUMESAKI GALLERY
横浜みなとみらいエリアの企業ミュージアム、最後にご紹介するのは大手電子機器メーカーのLG Holdings Japan株式会社が運営する「YUMESAKI GALLERY」。
LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER(神奈川県横浜市西区)の1階に位置する体験型施設で、LGが持つ世界観や未来像をコンセプトに、体験者が各々の夢を具現化できるエンターテイメント空間となっています。
「旅立ち・色彩・音楽・天文・時間」の5つの島に見立てたエリアが各々のテーマとメッセージを発し、様々な体験デジタルコンテンツを展開しています。
本ブログを運営するHAKUTENは、一部意匠設計から携わり実施設計、内装施工、デジタルコンテンツ企画制作まで担当しました。企業ミュージアム「YUMESAKI GALLERY」完成までの裏話を赤裸々に語るブログも公開しています!
「YUMESAKI GALLERY」のプロジェクトストーリー
「YUMESAKI GALLERY」の体験レポート
施設概要
施設名:YUMESAKI GALLERY
所在地:〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島1丁目2−13(google map)
営業時間:10:00~18:00 (最終入館17:00)
定休日:火曜
入場料:無料
アクセス:みなとみらい線「新高島」駅 2番出口から徒歩1分
市営地下鉄ブルーライン「高島町」駅 2番出口から徒歩7分
JR/市営地下鉄「横浜」駅 東口から徒歩10分
URL:https://yumesaki-g.com/
■その他エリアの企業ミュージアム
⑦マツダ/マツダミュージアム
最後に、広島県での企業ミュージアムの事例をご紹介します!
1920年に創立され、世界的な自動車メーカーであるマツダ株式会社の企業博物館「マツダミュージアム」。
創業の地となる広島県に構える「マツダミュージアム」は、創立100周年にあわせて大々的なリニューアルが行われました。マツダの歴史や技術を一覧することができる、大規模な企業ミュージアムです。
3645平方メートルという大規模な常設型の企業博物館である「マツダミュージアム」では、マツダの想いや活動を、ストーリー性を持って多くの人に感じていただくために、歴史の蓄積やその重みと向き合いながらミュージアム内の「体験」をデザインしていったそうです。
プロジェクトチームがどのような議論を重ね、その「歴史」の輪郭をつかんでいったのか。
そんなプロジェクトの背景を対談形式でインタビューしたブログも公開中です。
「マツダミュージアム」のプロジェクトストーリー
施設概要
名称:マツダミュージアム
所在地:〒735-0028 広島県安芸郡府中町新地3番1号(google map)
※完全予約制 (予約サイト:https://www.mazda.com/ja/about/museum/reservations/)
アクセス:JR向洋駅南口より徒歩5分。
URL:https://www2.mazda.com/ja/onlinemazdamuseum/
企業ミュージアムを起案するときのポイント
自社で企業ミュージアム(企業博物館)を起案予定の方に、HAKUTENでおこなっている「ブランドを体現した商空間」の設計メソッドを少しだけご紹介します。
※「ブランドを体現した商空間」・・・企業ミュージアム、企業博物館、フラッグシップストア、ポップアップストア等の主にブランディングをも目的とした商空間。
1.ブランド価値の整理
企業ミュージアムやフラッグシップストアのような常設空間の場合、中長期的にぶれない軸となるブランド価値を体現することが重要です。
そのため、まずはブランドの価値とはなにか、生活者が感じている認識(パーセプション)も踏まえて分析し、再定義します。
パーセプションとは、ブランドに対する生活者の認識です。
生活者とのコミュニケーションや、顧客接点の積み重ねにより時間をかけて形成されていきます。
企業が自社に対して認識している価値と、生活者のパーセプションとの間にズレがあると、訴求すべきメッセージがうまく伝わりません。
そのため、両者の視点からすり合わせていく必要があります。
2.コア体験をつくる
企業ミュージアムやフラッグシップストア、ポップアップストアでは購買体験に加え、一般店舗ではできない深い体験=“コア体験”を設けることが重要です。
口コミやWEB上のコミュニケーションでは、機能性などの「手段価値」の情報発信が多く、それによって得られる「実現価値」まで伝えることは困難です。
だからこそ、リアルな体験を通して「実現価値」を伝えていくことはブランドマーケティングにおいて非常に重要だと言えます。
例えば、味覚や嗅覚といった五感を使った体験は、より記憶に残りやすいとされています。「さわる」「食べる」「自分でつくる」といった体験を交えることで、生活者にブランドの印象を残しやすくなります。
3.カスタマージャーニーを設計する
ブランドの価値の整理と、価値を伝えるコア体験を企画してから、企業ミュージアム全体を通してのカスタマージャーニーを設計します。コア体験によるブランド理解がピークとなるように、来訪者のタイムライン(順路)に沿って細かい施策や空間演出を考えていきましょう。
また、体験の最後には持ち帰っていただく“おみやげ”を用意することで、ブランド想起のきっかけになるだけでなく、そこからUGC(User Generated Content:SNS投稿などユーザーが生成するコンテンツ)を生み、さらに他の生活者の興味喚起を伝播させられます。
HAKUTEN流 体験設計メソッドを公開中
ブランド価値を伝えるリアル体験の設計メソッドについて、さらに詳しく解説した資料もこちらから無料でダウンロードいただけます!
まとめ
- 企業ミュージアム(企業博物館)は、ブランディングを目的に一般の生活者に開放されている企業の施設。
- 企業ミュージアム(企業博物館)をつくるときのポイント
①ブランドの価値の整理
②価値を伝えるコア体験を企画する
③カスタマージャーニーを設計する
HAKUTENは、人と社会のコミュニケーションを「体験」によってつなぎ、お客様のビジネスを次へ動かすクリエイティブカンパニーです。
そんなHAKUTEN の企画メソッドがまとまったお役立ち資料を公開中!
ブランド価値を伝えるリアル体験の設計メソッドについて、さらに詳しく解説した資料もこちらから無料でダウンロードいただけます!