トヨタの源流として知られる自動車部品メーカーの株式会社豊田自動織機(以下:豊田自動織機)は、2023年10月26日(木)~11月5日(日)に開催されたJAPAN MOBILITY SHOW 2023(以下:JMS)に出展。博展はブースのコンセプト設計、プランニング、デザイン、コンテンツ制作、施工、運営に至るまでトータルサポートいたしました。
JMSは、東京モーターショーから名称を改め、モビリティの枠を超えた新たな展示会として一新。企業が目指したい未来を一方的に見せるのではなく、来場者と共に目指したい未来を考える場として開催された今回、豊田自動織機が取り組むカーボンニュートラルをブースから発信しました。
当プロジェクトに携わった豊田自動織機 広報部の深谷さん・岡本さんと、博展 プロデューサー河田さん、本間さん、デザイナー 丸山さんより、JMSブースにかけた想いを語っていただきます。
Index
- JMSは、豊田自動織機らしさを全国規模で発信できる場だと捉えていたんです。
- 他の会社にはない歴史の重みにこそアイデンティティがあるんです。
- 華美ではないけど美しい。創業以来“紡がれてきた歴史”を示しました。
- 若い方からご年配の方まで、豊田自動織機のルーツと事業に共感していただけました。
- JMSブースを全社で作り上げたことが、社内のモチベーション向上にも効果的でした。
- 「いいものを作ろう」という共通のゴールに対して、全員が同じ方向を向いていました。
JMSは、豊田自動織機らしさを全国規模で発信できる場だと捉えていたんです。
岡本:JMSは、自動車業界における日本最大の展示会。当社のカーボンニュートラルに向けた取り組みや、製品はもちろん、当社らしさもお伝えしたいという想いがありました。
深谷:自動車の電動化が進む中で、当社も電動化にかかわる製品を幅広く扱っています。それらの製品を通して、当社のことをより知っていただきたい。JMSはその発信を全国規模でできる場だと捉えていたんです。
本間:そうでしたね。今回、展示会も「モーターショー」から「モビリティショー」へと名前を変えたタイミングで、業界全体としても転換期にあります。どの会社もカーボンニュートラルやサステナビリティをテーマに、電動化にまつわる技術を展示してくるだろうと予想していました。その中で、「豊田自動織機さんだからこそ言えることって何だろう?」という視点から、すり合わせをしていきました。
河田:サステナビリティに関する取り組みを知ってもらうことはもちろん必要ですが、今の時代においてはキーワードとしての新鮮さはありません。なので、「自動織機だからこそ」という切り口が必要でした。また、JMSには学生さんや若い世代も多くいらっしゃいます。カーボンニュートラルを当たり前とする彼らにとっては、企業としてのビジョンを伝えるほうが共感できると考えました。
岡本:実は、2017年の東京モーターショーである海外メーカーのブースを見たときに「ダントツでかっこいい!」と印象に残っていたんです。それは博展さんが担当されたブースだったと後から知りました。その経緯もあって、博展さんは豊田自動織機らしいブースをどのように企画してくれるかな?という期待を持っていましたね。
他の会社にはない歴史の重みにこそアイデンティティがあるんです。
本間:今回JMSブースの企画をするまでに、他の事業部の方々とお仕事させていただく機会がありました。その中で、豊田自動織機という会社像・人物像として、共通する「誠実さや利他の心」を感じていました。
豊田自動織機さんは、社祖であるの豊田佐吉氏の精神を明文化した「豊田綱領」をよりどころとして、グループ全社で受け継がれています。自分がこれまでにお会いしてきた社員の方々が共通して持っていらっしゃる想いは、その豊田綱領とリンクしていることに気が付いたんです。JMSに出展するなら、その精神をメッセージとして打ち出していくべきだ、と以前から思っていました。
なぜ社会課題の解決に取り組むのか。それは「豊田綱領のもとに仕事をしている豊田自動織機だから」と一言で答えられる。他の会社にはない歴史の重みにこそアイデンティティがあると考えました。
岡本:当社の社員と関わる中で、「この会社の魅力は人にある」ということに本間さんが気づいてくださって。それって社員の私たち自身では気づけないところなんですよね。あらためて、うちって良い会社なんだなって、博展さんを通して知ることができました(笑)JMSブースをぜひお任せしたいな、と思えました。
華美ではないけど美しい。創業以来“紡がれてきた歴史”を示しました。
–コンセプトからどのようにデザインしていったのでしょうか?
丸山:清潔感があって美しいブースにしたいという想いは事前に伺っていました。それを踏まえ、豊田自動織機の企業や人の個性を考えて、「華美ではない美しさ」をデザインコンセプトにしました。目指すのはモビリティショーらしい派手なブースではなく、豊田自動織機らしく目立つブースが良いという博展の想いをお伝えしました。
豊田自動織機らしく目立つブースにするために、織機のルーツになっている「糸」をデザインモチーフにし、ルーツ紹介展示から各コーナーへ糸が繋がる装飾にすることで、人の想いや技術の伝承、“紡がれてきた歴史”を表現しています。
「糸」は1本では細く繊細なものですが、集めることで「光」を受ける面にもなります。
「糸」で繊細な清潔感を表現しながら、「光」を加えることで明るく目立つブースにすることを意識しました。
ブースのデザインを考えるうえで、ずっと頭にあったのは「我々は豊田自動織機だから」という言葉。他社だったらこのデザインにはしませんでした。「織機」にゆかりのある糸を、空間の装飾だけではなく、グラフィック・映像など色々なところに取り入れ、ブース全体にコンセプトが紐づくデザインとしました。
岡本:企業ロゴまで真っ白なブースで、「本当に会場の中で目立つんだろうか?」と最初は不安でした(笑)でも糸と光を用いた装飾や、企業ロゴの見え方については博展さんの工場で事前検証を行いまして、最後はプロである皆さんにお任せしたことで、綺麗でカッコいいブースになりましたね。
河田:コンセプトに沿ったコンテンツとして、社員さんへのインタビュー映像も制作させていただきました。8つの部署から合計10名ほど、色々な社員さんとお会いしてお話を聞いていくのは楽しかったですね。こういうインタビュー企画って、実現することが難しいんですが、どの社員さんもポジティブに参加していただいて。
岡本:各部署に人選をお願いしたところ、若手からベテランまで幅広く名乗り出てくれましたね。
深谷:当社らしさを伝えるには、背伸びしたところを見せても意味がない。等身大の社員の姿を見せることができたと思います。インタビュー映像に出演していただいた社員の方々も「良い経験になりました!こんな機会をくれてありがとう」と言ってくれて、本当に良かった。
本間:そして、豊田自動織機らしさとして捉えていた言葉が、どの社員さんの口からも出てきたんです。技術部門の方など、みなさん控えめですが、熱い想いを持っている。それがよくわかった取材になりました。部品メーカーである豊田自動織機さんは、生活者がダイレクトに触れる企業ではないですが、社会を裏側で支えている。それが社員さんのマインドや芯の強さにも表れているんですよね。もともと感じていた「豊田自動織機社員ってこういう人」というイメージが、インタビューを通して確信に変わっていきました。「華美ではないけど美しい」というデザインコンセプトにも繋がりましたね。
若い方からご年配の方まで、豊田自動織機のルーツと事業に共感していただけました。
–会期中のお客様の反応はどうでしたか?
本間:会社のルーツを伝えるコーナーについて、当初社員の皆さんは「これを展示して興味を持たれるんでしょうか?」と疑問に思われていました。でも、実際のところ会期中にはお客様が立ち止まって見てくれていましたね。来場者アンケートでも、このコーナーに関してコメントをくださった方もいらっしゃいました。
岡本:うちの製品や技術って、言葉で説明するには難しいものが多いんですね。でもルーツの展示は小中学生のお客様でも読めばわかっていただける。若い方からご年配の方まで、「そうか、豊田自動織機ってこういう会社なんだね」と共感していただけました。
深谷:あのルーツ展示がないと、「なぜこの会社が電動コンプレッサーを扱っているの?」と、展示製品と【豊田自動織機】という会社名が紐づかないんです。会社と製品の繋がりへの理解を深める意味でも重要だったと思います。
JMSブースを全社で作り上げたことが、社内のモチベーション向上にも効果的でした。
岡本:今回は製品だけでなく、当社で働く人にフォーカスした内容になりましたが、社内外からの反応もよかったです。「こんなに社員さんが出ているブースってほかにないね」って皆さん声をかけてくださった。
インタビューを受けた社員も説明員としてブースに立ったのですが、「すごく勉強になりました。実験室にいると、お客様とお話をする機会がないので、こういう形で自分たちの取り組みをアピールできたし、意見もいただけた。参加してよかったです」と言っていただけて、私としてもすごく嬉しかった。
深谷:技術者は、自分たちの仕事をお客様へ直接伝えられる機会が少ないんですよね。社内のモチベーション向上につなげるのも、我々広報部としての狙いのひとつでしたし、とても効果的でした。広報部だけではなく全社で作ったブースという実感があります。そのきっかけを博展さんが作ってくれました。
河田:JMSのように、全社を挙げて出展するような大型の展示会は、インナーブランディングの場として活用する意義があると思っています。それをちゃんと実現できたのも、今回の良い結果でしたね。
「いいものを作ろう」という共通のゴールに対して、全員が同じ方向を向いていました。
岡本:なにより当日、各社のブースがずらっと並んでいる中で、ものすごく胸を張って自社のブースに立てました。それは準備段階からのプロセスを経て、満足度が高かったからだと思います。
我々がお願いした以上のものを返してくださったのは嬉しかったですね。こちらが依頼した通り100パーセントのものをそのまま出されても面白くないし、きっと博展さんが目指しているのはそれを越えたところ。終わってみれば、運営も含めて非常に満足度の高いものだったなと思います。
深谷:何よりもまず一緒に仕事をしていて楽しかった。うちも博展さんも、人を大事にする会社なのでフィーリングが合ったのだと思います。僕自身展示会に携わるのは初めてだったので、ちゃんと推進できるのかな?という不安はあったんですが、良いチームとして安心して進めることができました。
河田:楽しかったのは僕らも一緒です。「いいものを作ろう」という共通のゴールに対して、全員が同じ方向を向いていました。
本間:これからも、豊田自動織機らしさという軸は変えずに、広報部の皆さんも楽しくなるような発信のお手伝いをできればと思います。
OVERVIEW
CLIENT | 株式会社豊田自動織機 |
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PROJECT | JAPAN MOBILITY SHOW 2023 |
VENUE | 東京ビッグサイト |
トヨタの源流として知られる自動車部品メーカーの株式会社豊田自動織機は、2023年10月26日(木)~11月5日(日)に開催されたJAPAN MOBILITY SHOW 2023に出展。博展はブースのコンセプト設計、プランニング、デザイン、コンテンツ制作、施工、運営に至るまでトータルサポートいたしました。 JAPAN MOBILITY SHOWは、東京モーターショーから名称を改め、モビリティの枠を超えた新たな展示会として一新。企業が目指したい未来を一方的に見せるのではなく、来場者と共に目指したい未来を考える場として開催された今回、豊田自動織機が取り組むカーボンニュートラルをブースから発信しました。 |