INTRODUCTION
日本製鉄株式会社様は名古屋製鉄所にあるショールームをリニューアル。
博展は空間設計を担当し、日本製鉄様と一緒に“鉄の魅力を伝えられる空間”を考え抜き、能動的に学びのアクションを起こせる、子どもたちにも分かりやすい展示をデザインしました。
日本製鉄について / 鉄そのものの魅力 / 暮らしの中の鉄 / 見学者と考える未来、という一連の流れを重視し、体験型の構成を作成。導線上にストーリーが展開するため、見学者は回遊しながら一連の流れに沿って鉄の魅力に触れられる空間になっています。
今回はプロジェクトを担当したプロデューサー 三澤、プランナー 福坂、デザイナー 原、プロダクトマネジメント 小野寺の4名が、“鉄の魅力”に着目した名古屋製鉄所リニューアルの裏側について語ります。
<写真>
<プロデューサー 三澤、プランナー 福坂、デザイナー 原、プロダクションマネジメント 小野寺>
OUTLINE
どんなストーリーを描いて来場者の方々に体験をしてもらうのか。ストーリー性を大事にするのが博展らしさ
三澤(プロデューサー)
この案件は日本製鉄様が「新日鐵住金」から「日本製鉄」に社名変更されたことに伴い、愛知県東海市にある名古屋製鉄所に併設されたショールームをリニューアル。認知拡大や印象向上を目指したプロジェクトです。空間デザインや展示内容のディレクションを博展が担当しました。
福坂(プランナー)
名古屋製鉄所は年間2万5000人ほどが見学に訪れる人気スポットですが、ショールームは展示品も老朽化していて、失礼ながら製鉄所を見学するための通路のようになっていました。
それをアテンドスタッフたちが絶妙なトークで補い、魅力を伝えているという印象だったので、博展はそこに注目しました。
原(デザイナー)
アテンドスタッフは見学者に合わせて説明の仕方や表現を変えるなどの工夫をして、小学生から大人まで幅広い人たちを楽しませており、「この情熱とトークのスキルは新しいショールームに活かせるのではないか」と感じ、ごく自然に我々の共通認識が生まれたような気がします。
PLANNING
鉄の可能性と魅力を伝えるためのショールーム

三澤(プロデューサー)
本件のような展示を考える際に博展では、「ストーリーを通じて情報を伝える」という点を大切にしていますが、今回のプランの軸となったのは、アテンドスタッフの方たちが描いていたストーリーです。鉄の持つ魅力や可能性、将来性などを幅広く伝えるために作られた彼女たちのトークを、どうしたら最大化できるか。そこが提案のベースとなりました。
福坂(プランナー)
実際、鉄が持っている可能性はまだ30%しか引き出されておらず、日本製鉄様は鉄の可能性を信じて研究を続けています。その可能性を広く知っていただくために、新しいショールームのコンセプトは、「Fe-Flexible elements. Future elements」として、「鉄の可能性と魅力を伝えるためのショールーム」を目指しました。
もうひとつ大切にしたのは、鉄を通じた企業理解です。
鉄はアルミと違って重いとか、環境に悪いのではとか、誤解されてしまっている部分がたくさんあるため、「実は鉄ってこんなにいいものだよ」ということをきちんと伝え、鉄を正しく知っていただくことが重要だと考えました。
触れるという体験を通じて理解を深める「ハンズオン」

三澤(プロデューサー)
来場されるお客様は小さなお子さんから大人までとても幅広いので、分かりやすさと親しみやすさを重視。“ハンズオン”と呼ばれる展示法ですが、能動的にディスプレイに触れる体験を通じて、できるだけ分かり易く情報を伝える仕掛け作りを意識しました。
原(デザイナー)
地球で今、どのくらいの鉄が採られているかを伝える時、視覚的な説明だけでなく、地球儀の3分の1が外れる仕組みを作り、実際に触ってみることで、体験的に理解していただけるようにしました。
他にも、自分の手で磁石を上下することで鉄のリサイクル性の高さを伝えるなど、様々な体験コンテンツを数多く作りました。
小野寺(プロダクションマネジメント)
ショールームのモニュメントとなる展示什器も鉄で作ってあるので、来場者の方々が自分の手で感触を確かめることができますし、鉄の原料である鉄鉱石なども触ってもらえるようにしました。
製鉄所はリサイクルにも力を入れているので、水は何%くらい使い回しているのかとか、アテンドスタッフの女性たちが説明したいと考えているポイントを実際にヒアリングして、あれこれと要素を足していきましたね。
KEY FACTOR
「来場者が楽しんで体験をしている姿を見て、日本製鉄の皆様が心から喜んでくださっている。これ以上の喜びはありません。」

福坂(プランナー)
今回チーム博展として良かったのは、それぞれの立ち位置の人が能動的に機能した点です。
アウトプットだけなら他社でもできるかもしれませんが、それを生み出すまでの“どういうストーリーで来場者の方々に理解してもらうのか”という物語性を大事にするところが博展らしさだと思います。
もうひとつは、クライアント様と徹底的に対話するところです。
今回は6社のコンペだったのですが、コンペまでの4ヵ月間は足繁く通って、参考写真や方向性のコンセプトシートなどを持参して、ご要望をしっかりとお聞きして話を詰めました。プランの内容を評価いただいただけでなく、対応の仕方にも好印象を持っていただけたようです。
三澤(プロデューサー)
私たちはクライアント様のご意見を聞くことを大事に考えています。
アウトプットの勝負というより、お客様と寄り添って一緒に作っていくという、そのプロセス自体が博展らしさだと思います。
日本製鉄様からは、子どもたちが遊びながら楽しそうに「使っている」という評価をいただきました。私たちが狙っていたところを実際にやっていただいているとお聞きして、みんなで大喜びしましたね。
何より、一緒に作ってきた方々が、それを嬉しそうに話してくださったのがいちばんの喜びです。この案件を振り返って思い浮かぶのは、作り上げた空間ではなく、担当された方々の顔だったりします。
福坂(プランナー)
出来上がったものに対して、来場者の方々が楽しんでいる姿をご覧になって、日本製鉄の皆様が心から喜んでくださっている。担当した我々にとって、 これ以上の評価はないと思います。
OVERVIEW
CLIENT | 日本製鉄株式会社 |
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CREDIT
プロデューサー | 三澤 幸由 / 河田 友輔 |
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プランナー | 福坂 済 |
デザイナー | 原 慎太郎 |
グラフィックディレクター | 岡本 洋行 |
プロダクション マネジメント | 小野寺 悠太 |